まあ、食ってしまいたいくらいには。



「いや、ありえないでしょ、現実的に」


まっさきに否定したのはほの空ちゃんだった。


教室についたわたしがいの一番に駆け寄っていくと、ほの空ちゃんは無視するでもなく「おはよー」といつもの調子で言ってくれた。

そしてわたしが教室に来るまでのことを説明すれば、ありえないと一刀両断。

よかった、いつものほの空ちゃんだ。




「たしかに女子は敏感になってるよ?桃を見たら握りつぶしてミキサーでぐちゃぐちゃにしたいくらいは思ってるだろうけど」

「まあまあ憎まれてる。果実の話だよね?」

「けど、男子はそこまで興味ないからね。庶務にも、あんたにも」


グサッ。

胸に見えないナイフが突き刺さる。


そのとおりだけど、はっきり言われるとつらい。




「じゃあなんでなにも意地悪されないの?歴代の庶務はみんな虐められてるんでしょ?知ってるよわたし、机とイス窓から放り出されるんでしょ。私物を焼却炉に投げ入れられるんでしょ」

「大丈夫みたいよ、桃は」


それは気休めでもなんでもなく、本当にそうらしい。

ほの空ちゃんは教えてくれた。


昨日のうちに女子寮生の間に広まり、仲の良い通学生に伝わり、インフルエンザのようにあっという間に全校女子生徒の間に拡散された“それ”を。




「桃あんた、玖桜愔俐とデキてるらしいじゃん」

「さっきの!!」


一部で囁かれてるだけじゃなかったのか!