まあ、食ってしまいたいくらいには。




この世には

“ケーキ” “フォーク”という人間がいる。



“ケーキ”っていうのは、先天的に生まれた「美味しい」人間のこと。


フォークにとっては極上のケーキのように美味しく感じられる。ケーキの血肉はもちろん、涙や唾液、皮膚まで人体のあらゆる箇所が美味なんだとか。怖い。


ケーキは自分自身、また一般人から“ケーキ”だと気付かれることはなく、“フォーク”と出会って狙われることで初めて知るの。




“フォーク”は、後天的に「味覚が失われた」人間のこと。


だけど、唯一“ケーキ”である人間は美味しく感じられる。本能的に『ケーキを食べたい』っていう欲求を覚えるんだって。すごく怖い。


どうやら専用の栄養補給ブロックが流通していて、普段フォークはそれを食べているらしい。


味覚がない、ケーキを美味しく食べてしまうこと以外は一般人と目立った違いはないんだ。




だけど、“ケーキ”も“フォーク”もそこまで数は多くない。

世界の大多数を占めるのは、どちらでもない一般人。中にはフォークに出会うこともないまま生涯を終えるケーキもいる。



だからケーキはそこまで怯えなくてもいいし、ずっと家に引きこもってばかりじゃなくても大丈夫だよ。


って、前に知り合いのケーキを励ましたら「何も知らないくせに勝手なこと言うな」って怒られちゃったっけ。

そのとき投げられた時計がおでこに当たって血が止まらなかったのも、今となってはいい思い出。