「愔俐先輩、契約内容の変更を要求します」

「……言ってみろ」


書類から顔をあげないまま薄く唇をひらく。


見くびられてる。そう思った。




「自分の身は自分で守る。だから守ってもらわなくても結構です」

「それで?」



わたしの目なんて見る価値がない、とでもいうように依然として顔をあげない。


近寄っていっても、机に手をついてもそれは同じ。


だけど────




「わたしだけを見て」



ようやっと、目が合った。


まるでこの場にわたしと愔俐先輩しかいないみたいに。じっと見つめ合う。




「他のケーキは見ないでください」


朝方までずっと考えていた言葉は、実際に声に出したら勘違いされてしまいそうだった。

それでも甘やかな雰囲気なんて一ミリもない。


あるのはケーキとフォークの駆け引き。

ただそれだけ。