「……味覚音痴」
パンも、おにぎりも。
どれも変な味なのばっかり。
ベッドの上にぺたんと座りこんだまま、無造作に手に取ったひとつを口に運ぶ。
パリッとした海苔に、ふんわりと柔らかいお米。
めしょっ、ぐきゅ。
噛むたびに変な音がする。おにぎりらしからぬ音。
「ふえ……味わかんないよぉ……」
すん、すん、ひっく、もぐもぐ、すんっ。
涙がまじったおにぎりの味は、鼻がつまっていて全くわからなかった。
辛くて、悔しくて、打ちひしがれて。
そんななか食べるご飯は、それでもわたしの体を作って。
必要なエネルギーとなって、
泣き止んだときの自分のためになって。
泣きながら食べたご飯のことを覚えていれば、
「っなんでお水ないの~~、んぐ」
たぶんそれだけで、人は、生きていけるんだ。



