まあ、食ってしまいたいくらいには。



震える吐息を何度か洩らして、ぐっと唇を噛みしめる。



「……や、ればいい。いたぶられるくらいなら、いっそ食べられたほうがまし。いつもやってるみたいに食べ散らかせばいい」



聞こえる呼吸は一人分。


もはや生きているのかも怪しいその男の唇の動きから目を逸らせない。



食べない、と。

たった一言、そう言った。


そして次の言葉に、わたしは耳を疑うことになる。




「面白くないだろう」



「は……面白く、ない?」



なに言ってるの。


なに、言ってるの?





「人の命を…っ、なんだと思ってるんですか!!」



気がつけば涙をこぼしていた。


これまでなにがあってもフォークの前で泣くことはなかったのに。


わたしはボロボロと泣いていた。



滲む世界の中、

ぞっとするくらいに綺麗な顔は、なにを考えているのかわからない。


ケーキにフォークの考えることはわからない。



一生、わかんないよ……。