「……ん、」
ゆっくりとまぶたを持ちあげる。ここがどこか確認するより先に、目元に手を持っていく。
そこはほんの少しだけ濡れていた。
「目が覚めたか?」
少し離れたところから聞こえてきた声。
そこには、
「……芽野くん」
「まだ起きあがらないほうがいい。血圧が一気に低下したんだ、頭を低くして頭部へ血液が回るようにしろ」
「けつあつ、てーか……とーぶ、けつえき……」
ああ、そっか……。
わたし、生徒会室で気絶したんだっけ。
ベッドに入ったまま、自分の腕や足を動かしてみる。
「ある……ちゃんと。どこも、欠けてない」
痛むところも今のところないみたい。
ほっとしたわたしは、ここはどこかと芽野くんに訊ねた。
「ここは寮だ」
「寮?」
「ああ。生徒会、専用の」
「あー……そんなのもあったっけ」
わたし、通学生だし。
寮なんて敷地内にも立ち入ったことはなかった。
そこに、生徒会だけが入れる寮がある。
存在だけは知ってたけど、まさかそこに自分がいるなんて。
夢みたい。
夢は夢でも悪夢だけど。



