ケーキは病気になんてならないと思っていた。


すでにハンデを持って生まれてきたのだから、それ以上の苦労は重ねられないだろうと。

そう思い込んでいた。


彼女に告げられたのは聞き馴染みのある病名で。

同時に、馴染みのない病気でもあった。


説明されたところで頭が追いつかなかったけど。


彼女がそう長くない、ということだけはわかった。






「あのね、食べてほしいんだ」


いつもの公園。


その言葉にはとっさに口をついて出たような迷いはなく。

ずっと前から準備していたように、たしかな形をもっていた。


言葉を失う僕をよそに、彼女はひとりで話を進める。



「あ、投げやりになってるわけじゃないよ?」


でもね、も続ける彼女は。

もじもじと照れたように身体を揺らす。



「どうせならぁ、やせっぽちになる前に……美味しいときに、食べてほしくて」