まあ、食ってしまいたいくらいには。



ふわふわ、どこかアブナイ夢心地。


気を抜けばいまにも意識が飛んでしまいそうで。


わたしは必死に目に力をいれていた。




「玖桜さん」



本能が。ケーキとしての本能が、告げている。


ここで寝ちゃだめだ、危険だって。







「俺たちは……ここには、
────フォークしかいないんですよ」






今日はもう驚きすぎちゃった。

なんだか心が麻痺してしまったように、動かない。


それでもなんとか首を持ちあげると、愔俐先輩の顔が見えた。



笑っていた。愔俐先輩は。


この世で最もキケンなお皿の上、フォークに囲まれたわたしを見下ろして。



愉しげに口元を歪めていたんだ。







「……鬼。地獄に堕ちろ」



意識が途切れる前。

最後につぶやいたのは、たぶんそんな言葉だったと思う。