なにが起こったのか咄嗟に理解できなかった。
敬郷先輩に刺されそうになって……
いきなり腕を引かれたかと思ったら……
……なんで、愔俐先輩がわたしの前に?
「愔俐先輩」
どうなっているか、なんて。
本当は、頭ではわかっていた。
それを認めたくなかっただけだ。
……地面に滴る、赤いものも。
敬郷先輩が無表情のまま、身を引く。
その手には血に濡れたナイフが握られたままだった。
「きみはもっと賢いと思ってた」
淡々と事実を述べるような言葉に。
だとしたら、と愔俐先輩は同じ温度で返す。
「お前は俺を買い被りすぎたな」
そのとき遠くから聞こえてきたサイレンにはっとしたのは、わたしだけじゃなかった。



