「まあ、どうでもいいんだけどさ」
そう言いながら敬郷先輩がわたしに近づいてくる。
その分後ろに下がりたいのに、そうすることを許さない威圧感があった。
「愔俐、俺と手を組まない?」
その手元で鈍色に光るそれから目が離せない。
正直、彼らの会話も頭に入ってこなかった。
「協力してくれたらきみは見逃してあげる。これからも卒業まで、今までどおり一緒にいよう。……頭のいい愔俐ならわかるよね。どう動くのが、賢明か」
からだが固まって動かない。
死にかけたことは今までに何度もあった。
けど、今回は本当にダメかもしれない。
「俺たち、友だちだろ」
「……そうだな」
キラリと光る鋭利なもの。
ギラリと歪む怪物の顔。
「桃ちゃん押さえてて、愔俐」
すべてがスローモーションに見えたその世界で。
腕を引かれたかと思えば、
目の前に、
わたしよりもずっと大きな背中が広がった。
「お前にこいつは殺させない」



