「っ……最低」
今までこの人がどれだけのケーキに手をかけたかはわからない。
だけどその瞬間だけは、ありありと想像できた。
彼ら彼女らはどんなに苦しい思いをしただろう。
その絶望が、痛みが。
苦しいほどに伝わってきた。
「愔俐ならわかるよね?俺の気持ち」
愔俐先輩はなにも言わなかった。
わかるとも、わからないとも。
「ああ、わかんないか」
すると敬郷先輩が思い出したように眉を上げた。
「だって愔俐、フォークじゃないもんね」
がつんと頭を殴られた並の衝撃が走る。
……フォークじゃない?
誰が?……愔俐先輩、が?
軽いめまいがした。
くらりと歪んだ世界に一気に呑み込まれそうになる。
思えば、そう思わせるような言動が今までになかったとも言い切れない。
現に、いちごミルクを被ったわたしにいち早く気づいたりもしてたし。
愔俐先輩ならフォークを装うことくらいやってのけるんじゃないかと思った。
それでも……なんのために?
なんのために自分をフォークだと偽ってたの?



