こんなんでも、わたしは人の"悪意"には敏感だった。
三栗くんがわたしを好ましく思っていないこともわかっていたし、
親衛隊の女の子たちが本気でわたしのことを嫌っていたことも、ひしひしと伝わっていた。
だけど正直、敬郷先輩の悪意には気づけなかった。
それは何故か。
理由は至極簡単だった。
「いや〜甘く見積もりすぎたかな。まさかそんなに信頼関係ができあがってるなんて。……ああでも。愔俐は誤解されやすいから、いち友人としては嬉しいなあ」
この人には……
敬郷先輩には、悪意がなかった。
「ここ最近、ケーキの捕食を繰り返してたのは……」
「ああ、それ俺だね」
「なんでそんなことを」
その唇がなにかを言いたげに微かに震える。
けれど結局、わずかに口角を上げるだけだった。
「フォークがケーキを食べるのに理由なんている?」



