「っ……!」
わたしが逃げようとするよりも早く。
どこにそんな力があるのかと思うほど強い力で、腕をつかまれた。
ぎし、と軋む腕に顔をゆがめる。
「──たっ……ンぐ、っ」
助けを呼ぼうとした口さえも手で塞がれてしまい。
首になにか冷たいものを押しつけられた。
見なくたってそれがなんなのかは容易に想像がつく。
そっと、耳元で吐息まじりに囁かれる。
「静かに。声をあげた瞬間、君はもうあの世行きだ」
いいね?と。
にこやかに釘を刺されてから、手を離された。
あくまでも解放しただけであって、逃がすつもりはないんだろう。
一定の距離を保ったまま、わたしは敬郷先輩と向き合っていた。
「……フォークだったんですね」
「うん、まあね。びっくりした?」
やけにあっさりとしている。
わたしに話したところで害はないと思ってるんだ。
……もうすぐ、殺してしまうから。
そのとき、敬郷先輩がなにかに気づいたように。
わたしの後ろへと顔を向けた。
……なに?
とっさに振り返りそうになった。
だけど、すんでのところでとどまる。
これも罠かもしれない。
後ろを向いた瞬間に襲われるかもしれない。
だけど、わたしの後ろには本当に誰かがいるようで。
敬郷先輩がその人物に親しげな笑みを浮かべた。
「言われた通り、生け捕りにしたよ」
──────愔俐。



