はじめは冗談を言っているのだと思った。
わたしを気遣ってくれているのだと。
だけど彼の顔を見て、そんな考えはすぐに打ち消された。
敬郷先輩は本気でそう思っているようだった。
本能で一歩、身を引いた。
頭の中で警鐘が鳴り響いている。
「敬郷先輩……」
「ん?」
それを聞いちゃダメだって、頭ではわかってるのに。
どうしても聞かずにはいられなかった。
なんとかしぼり出してようやく出てきたのは、情けないほどに震えた声だった。
「いちごミルクの匂い、わからないんですか?」
わからないはずがない。
だって、これは。
離れていてもわかるくらいの匂いなはずで。
こんなにも近くにいて、気づかないわけない。
──匂いのわからないフォーク以外、は。
一拍置いたのち、
敬郷先輩が、不自然にわらった。



