三栗くんに話しかけようと口をひらきかけたとき、
「おい、遅えんだよ。てめぇが呼び出したんだろうが」
ドスの利いた声にびくりと肩を揺らす。
ソファに浅く腰かけ、行儀悪く机に脚を投げ出していた男の人。
3年の奈良町 名花先輩だ。
たしか役職は、会計だっけ。
「つーか誰だ、その女」
あ……わたしのこと、だよね?
愔俐先輩ほどじゃないにしても、この先輩の目つきもなかなかに悪い。
睨むような視線にたじろいでいると、三栗くんが助け船を出してくれた。
「メイちゃん先輩、怖がってますよ」
「いい加減その呼び方やめやがれ」
「彼女は私と同じクラスの2年です」
ね?と水を向けられる。「さっきぶりだね、桃」
「あ、うんっ、えと、甲斐田桃です。このたび、生徒会の庶務として……」
じゃ、ないんだよね。
どうしよう。なんて説明すればいい?
そういう意味で隣の愔俐先輩を見上げたのに。
愔俐先輩はちっともわたしなんか見てなくて。
その代わり、ぐいっと腕をひかれた。
──────また!



