「ね、甲斐田さん」


媚びるような、いやに優しい声が迫ってくる。



「うちらは甲斐田さんの味方だよ」



この人たちも元は生徒会のファンだったのに。

あれだけ恋する乙女のようで可愛かったのに。


あれだけ、わたしのことを嫌っていたのに。



「怖かったね。可哀想」



こんなときでも彼女たちとは分かり合えないのだと思い、なんだか虚しくなった。

必要のない慰めが余計にわたしたちの距離を広げていく。


わたしが怖いのは、あなたたちだよ。

フォークよりもずっと、怖い。




「わたし、脅されて入ったんじゃない」

「え……」



触れられる前に一歩、後ろに下がった。


ほの空ちゃん以外は信じてくれないその言葉を。

この数日間で何度、繰り返しただろう。



「わたしは自分の意思で生徒会に入ったの」



後ろで彼女たちがなにか言っている。

それらをすべて振り払うように。


ぼやける視界のまま、駆け出した。