最近、彼女の匂いが強くなったような気がする。

それを軽い気持ちで伝えると、思った以上にショックを受けたような顔をされた。



「えーそれって体臭がってこと?やだぁ」

「べつに嫌な匂いではないよ。多分、フォークにしか分からない匂いだと思うし」

「えーん。なんでクサイんだろ……」

「だからクサイとは一言も言ってないじゃん」



制服の袖に鼻を近づけ、必死に匂いを嗅ぎとろうとしている。


本当に嫌な匂いなんかではなかった。


それとはまたベクトルの違う、まるで熟れてきた果実のような匂い。


もうずっと昔、おそらくまだ味覚や嗅覚が機能していた頃、がんで亡くなった祖母の家で出された桃がこんな匂いだった。