まあ、食ってしまいたいくらいには。



うわぁ、素人が見てもわかるほどに重厚な造り。

これきっと防音だろうな。



「中でどれだけ騒いでも外には漏れなさそう」

「さすがのお前の声でも聞こえないだろうな」

「どういうことですか?」


愔俐先輩はもうなにも答えてくれなかった。


意味不明。

意味不明なのに、なんでかな。


……この奥に行っちゃいけない気がする。




「あの、」


やっぱりわたし、帰ります。



言い終わる前に、愔俐先輩の手がドアを押し開けていた。



ギィィ。


不気味な音とともに飛びこんできたのは、ソファに座っていたり、机に脚を投げ出していたり、扉の近くに立っていたりする男子生徒たち。


そのどれもが見たことのある顔だった。





「……桃」


ソファに座っていた三栗くんと目が合った。


彼はわたしを見て、一瞬、驚いた顔をしたあと。



ふ、と表情を落とすように微笑んだんだ。