まあ、食ってしまいたいくらいには。


――――――



その日の夜、滅多にならないスマホが鳴った。


表示には彼女の名前。

向こうからかかってくることは滅多にない。


なにかあったのだろうか。

すぐに応答ボタンを押して、スマホを耳に当てる。



「もしもし。どうかした?」

『……いや、特になにも』


あきらかにその声は沈んでいた。

なにかがあったか、それとも不安になっているのか。



「そっか。ごめんね!しばらく連絡できなくて」

『いいよ。学校、忙しかったんだろ』

「うん。生徒会のほうが立て込んでてね」


不自然に間があった。


この話題はまずかったかもしれない、と。

数秒前の自分の発言に後悔していると、彼女がビデオ通話にしてもいいかと訊いてきた。


あ、そうだよね。

いつもそれでやってるし、わたしも顔が見たい。


ふたつ返事で了承し、カメラをオンにする。


ぱ、と映った彼女はまた少し痩せたような気がした。