「……っぶなぁ!隙あらば狙おうとしないで!?」
「残念」
いや「残念」じゃないよ。
しかもそんなに残念そうじゃないし。ブラフか?
しっかり防いだというのに、三栗くんはさらに顔を近づけてきて。
わたしの口……ではなく、首元へと唇を落とした。
「……ごめんね。痕、残っちゃった」
あわてて近くの鏡をのぞき込む。
するとてっきりそこにあると思っていた“痕”はなく、そこにうっすらとあったのは細長い痕のようなもの。
「あ、ああ……昨日の……なんだ」
「……なんだか、残念そうな顔してるけど」
「な、してな──」
「なに、桃、なんの痕だと思ったの?」
わかってるくせに、意地が悪い。
やけくそになったわたしは、鏡越しの彼に向かって叫んでやった。
「これも立派な愛の証だよね!」
三栗くんが、わらった。



