ぽつり、ぽつりと教えてくれた。
数年前、彼がまだ中学生のとき。
ケーキだった幼なじみをフォークに殺されたらしい。
殺した相手は同級生、そして幼なじみの恋人でもあった。
相手がフォークであることを知っていた三栗くんは、必死にふたりの仲を反対した。
だけど、その子は「彼だけは大丈夫」だって最後まで笑顔でいたらしい。
そう、最期のその瞬間まで。
相手の部屋で見つかった、すでに事切れた幼なじみ。
その同級生はもちろん逮捕されて、少し前まで少年院に入っていた。
出所したのはつい最近だという。
「あいつがここからそう遠くないところで暮らしてるって聞いたとき、気が付けばその場所に向かってた。そいつ、どうしてたと思う?」
「どう、してたの」
「笑ってた。どっかの作業服着て、仲間と笑ってたよ」
ぎゅっと胸の奥が苦しくなった。
三栗くんは、もっと苦しくて、悔しい思いをしたはずなのに。
「……バカみたいだろ。自分が食われてるのに、笑ってられる幼なじみも、人を殺しておいて、その数年後には笑ってられるそいつも」
三栗くんが目をつぶる。
押し出された涙が、わたしの頬の上に落ちた。
「殺したいほど憎いのに、向こうの両親だってそれを望んでいるのに……結局、怖くて、そいつと同じ人殺しになることが怖くて、指をくわえたまま見てることしかできない私が、いちばん……バカだ」
「バカじゃないよ。バカじゃない。三栗くん、自分で言ってるじゃん。その人と同じになるのが怖い、って。その通りだよ。正しいよ。三栗くんが手を下す必要なんて、どこにもない」
ぽつり、と三栗くんがつぶやいた。
あいつが生きているかぎり私は笑えない、と。



