「はぁぁぁ、よかったぁ」
どっと息を吐き出して三栗くんの背中を大きくさする。
「三栗くんがここにいてくれてよかったぁぁ」
「どういう、意味」
「わたしだってよくわかんないけど。だけど、三栗くん、どっか行っちゃいそうだったから」
「……どっか」
「うん。手を伸ばしても届かないようなところ。もう戻って来られないようなところに、ひとりで行っちゃいそうだったからさぁ、心配したんだよ」
しんぱい、と三栗くんはまたもやオウム返し。
「自分が殺されかかってるのに、人の心配を?」
「だって自分のことはもう、どうしようもなかったし。さすがのわたしもあの状態から形勢逆転はできないって」
「……私が好きになった桃はそんなこと言わない。もっと自由で、生き汚かった」
「生き汚い」
たしかにそう見えるかもだけど。
わたしも一応、花も恥じらう乙女なのですが。
三栗くんが顔をあげる。
泣いていた。
ボロボロと大粒の涙を流して、三栗くんは泣いていた。
「そんな桃がずっと憎くて、……羨ましかった」
ボロボロと。
三栗くんのつけていた仮面も外れていくように。
その仮面の下から現れたのは、傷だらけの少年だった。



