まあ、食ってしまいたいくらいには。



つぶやくように落とされたそれは。

あまりにも、あまりにも悲痛な声だった。




「また急にいなくなられたら、今度こそ、耐えられそうにない」



吐き出そうとした息が、一瞬にして詰まった。

首を絞められているからか、それとも別の理由か。


……でも。

気を失う前にこれだけは伝えておかなければ。

じゃないと、死んでも死にきれない。




「やめたんだ……」



それが当たり前だから、考えたこともなかった。

疑ったことなんて一度もなかった。


男と女だけじゃなくて、この世に存在するケーキとフォークという第二の性。


こんな世界がはたして普通か、異常かどうかなんて。




「……ケーキだからって怯えて過ごすこと、やめた」



きっと、普通じゃないんだと思う。この世界は。


ケーキやフォークなんていない世界はみんなお伽噺。

小説やドラマの中だけの夢物語。




「フォークだからって人を決めつけることも、もうやめたの」



じゃあ、この世に生を享けてしまったわたしは。

ケーキとして生まれてしまったわたしは。




「……後悔するよ、桃」


「後悔なんて、しない。わたしは……自分の人生に、後悔なんてしない」



後悔なんてしようと思ったらいくらでもできる。


でも、だから、だからこそ。


わたしは人生に後悔なんてしたくない。


ケーキだからって最初から諦めたくないんだ。