まあ、食ってしまいたいくらいには。



余裕の微笑をたたえて何事にもゆったり構えているいつもの彼はここにはいなかった。


本当に食べられてしまうかもしれない。


いまの三栗くんにはそう思わせるなにかがあったし、

力の入ってきた指もその証拠だった。




「私は言ったよ。フォークは信用するなって」

「……でも、三栗くんたちは……」



酸素がうまく取り入れられない。

じわじわ意識が遠のいていくのを感じる。




「バカだね、桃。バカ正直はバカを見るんだよ」

「めっちゃバカって言ってくるじゃん……」

「ほんと、そんな甘い考えでよくここまで生き残ってこれたよね」



前にも似たようなことを言われたことがあった。

たしかそれも、三栗くんだった。




「この人だけは大丈夫、なんて。そんな保証はどこにもない」



自分のことさえも信用していないような言い方。


部屋中のくらやみが、三栗くんの周りに集まっていくように。

彼がどんどん、黒く染まっていく。



赤い口がひらいて。






「……死んでからじゃ、もう遅いんだよ」