「愔俐先輩。わたしの名前、呼んでみてくださいよ」
「契約内容にない」
すげなく返される。
つれないなあ。
「ちょっと呼ぶだけじゃないですか。もしかしてわたしの名前、覚えてないんですか?わたしは先輩の名前、覚えてますよ。玖桜愔俐。男。18歳。職業、高校せ──」
「どうすればお前は黙る?」
「ひえ、おと、落としたら愔俐先輩も巻き添えになりますからね!?」
初めて会った日と同じように、担がれてのぼる生徒会室までの階段。
腰に回されていた手が緩められたように感じた。
ひしとしがみついていた背中にさらに抱きつくようにする。
「わたしが死ぬときは愔俐先輩も死ぬんです。死んでもこの手は離さない」
「俺は死なない」
「でしょうね。愔俐先輩は地球に氷河期が再来してもしぶとく生き残ってそう。というか、むしろ生き生きしてそう」



