「敬郷先輩だ」
しかも、袴姿だ。
うわーカッコいいなあ。
遠くから静かに見惚れていると、こちらに気づいた敬郷先輩が構えていた弓をすっと降ろした。
え、あれ、呼ばれてる……?
ちょいちょいって手招きされてる。
もっと近くで見ていいよってことかな。
今日はギャラリーもいないようだし、お言葉に甘えてもう少し近づかせてもらおう。
敬郷先輩の表情がわかる程度まで近づくと、にこりとほほ笑まれたのがわかった。
なんてサービス精神なんだろう。
先輩がふたたび弓を構える。
あとから教えてもらったことだけど、的の真ん中に近いほど点数が高くなるわけではないらしい。例外もあるけど基本的には的に中っていればいいんだとか。
それでも敬郷先輩はすべての矢を的の中心部分に収めていた。
「わぁー……すっごい、……わっ、」
そのとき追い風が吹いて、わたしの髪を後ろから前になびかせていった。
さすがに急な風には対処できなかったのか、
弓を引いていた敬郷先輩が僅かに身体を揺らして、
──────ガツンッ!
どこか刺さってはいけないところに刺さった音がした。



