「だから安心してください。大丈夫。大丈夫です」



奈良町先輩がいつフォークになったのか。

なんで映画が好きなのか、どうして暇を嫌うのか。

なんで女の人を嫌いになって、どんな過去があるのか。


何一つ、わからないことだらけだけど。

これだけははっきり言えるよ。



「わたし、もっと、先輩と一緒に映画観たいです」



だめですか?と。


不安になって付け加えると、少しして「いーけど」と返ってきた。



「!! やっ」

「その代わり」

「なんかデジャヴ」



「今度娯楽室に来るときは、てめえの持ってるジブリ全部持ってこい」



にまにまにま~~って。

このときほど口角が上がった日はないと思う。


「せんぱぁい、ドンハマりしてるじゃないですかぁ」

「つつくな、殺すぞ」


うわっびっくりした。

温度差で風邪引きそうになった。


やっぱり、まだまだ口は悪いなあ。

女嫌いもそう簡単には治らないようで、触れられることを極端に嫌がる。


それでも。鬱陶しそうに肩から顔をあげた奈良町先輩は、わたしの顔を見て。





「……、ばーか」



つられるように、ふっと笑ってくれたんだ。