まあ、食ってしまいたいくらいには。



「よかったら先輩の宿題も手伝います?読書感想文くらいならできますよわたし」

「…なんで普通にできんだよ」

「え、いやだって本読んで感想書くだけ……」


ちげーよ、と苛立ったように遮られる。



「てめえを襲ったんだぞ、俺は。なのになんで話しかけられんだよ」

「……だから、ずっと寮にいなかったんですか?」


なにも答えない、その代わりに。

胸ぐらをつかまれて壁に押しやられた。



「っ…、」

「なんでお前、こんなとこにいんだよ。とっとと逃げちまえばいいのに、なんでずっと居続けるんだよ」


奈良町先輩は苦しげに、続ける。



「俺は、ずっと、お前の考えてることがわからねえ」


そんなの……

──そんなの、当たり前じゃん。



「だって先輩、わたしのこと見ないじゃないですか。いっつもそう、わたし越しに見てるのはわたしじゃない。そんなの、わかるわけないじゃないですか」


ぐ、っと込められた手に力が入るのがわかる。

息苦しさに思わず顔をしかめたけど、無理やり息を吸いこんだ。


もー我慢の限界。

言ってやるもんね!



「…怒ってばっかだと思ってたけど違った。いつも、ずっと、"恐がってた"のは、先輩のほうだった。それを誤魔化すために怒ったふりをしてただけ……っ、ぐ」



……ほら、ドンピシャ。