まあ、食ってしまいたいくらいには。




どこからかドアの開閉音がして、うっすらと目をあける。

朝まで寝てしまってたみたいで、かすかに雀の鳴き声もきこえた。



「んぅ~…………ひっ刺激色」


てっきり自分の部屋で寝ていたと思ったのに、わたしが目を覚ましたのは壁一面が真っ赤な趣味のわるーい部屋。

こういうのワインレッドっていうんだっけ。

どっちにしろ悪趣味だ。



「って、これ枕についてるの血?血だよねこれ?えっやだ……」


すぐさま手足を確認する。欠損なし。

次いで触れたおでこには、大きめの絆創膏が貼られてた。

……肩のとこにも、ガーゼがあてられてる。



「、あれ……?」


ある部分に手を持っていけば、違和感。


そのとき部屋に愔俐先輩が入ってきて、起きあがっているわたしに目を細めた。

まるで全盛期のセミでも見るような目つきだった。


その手元に目がいく。



「あの、わたしの分のコーヒーは……」

「ないが?」

「……ですよねー」


優雅にコーヒーカップを傾けるその姿は様になっていた。

腐ってもイケメン。

イケメンという俗な言葉さえも似つかわしくない、造形美。


この顔に騙されて食べられちゃったのは、もしかしたらケーキだけじゃないのかもしれない。なんて。