まあ、食ってしまいたいくらいには。






なけなしの虚勢も理性も塵同然。

この人を前にすればすべてが無意味になる。



「ちょっと、さっきからそこばっかり、ぅ……」


じくじくと熱を帯びているところばかりを責め立てられる。

やっぱりこの人、生粋のサディストだ。


どこをどうしたらいいか、ぜんぶ解ってる。



「んぁっ、…」

「声くらい好きに出せ」

「…う゛ーー…」

「唸れとは言ってない」


不意に出してしまった声を恥じるように、枕にぐりぐりと顔を押しつけた。

それでも責める手を緩めてはくれない。


血、にじんでるはず。

それでも匂いに惑わされる様子なんておくびにも出さず、いたって冷静だった。



と、ふいに身体がびくりと跳ねる。



「っ……いたい。そこ、いたいです」


するとその部分をもっと押された。

びりびりと電流が走るような感覚に、きっと相手を睨みあげる。



「、いたいって言った」

「そうか」

「いたいって言いました」


言い直したとて、無駄だった。

ちらりと見えた瞳には同情も、慈愛も。

もっといえば欲情の影すら潜んでいなかった。


自分ではこわくて触れられないようなところを、なんの迷いもなく触れてくる手つきは、呆れるほどに手慣れていて。



「……っ、いたい……」


いたい、だなんて。

思ってもないくせに。


身体中の熱がぜんぶ眠気に置き換わったみたいに、ふわっとさっきよりも強いそれに引きずられそうになる。


や、まだ…だめ。

だってこのあと手当てもしなくちゃだし、もっかいお風呂にも入りたい。


それに、



「……こわい。いまひとりで眠るの、こわい」


縋るように首の後ろ回した腕は、受け入れられることもなければ拒まれることもなく。

ぎゅっと目をつぶると涙が睫毛に押し出されるのがわかった。


いちばん弱いところに鋭いものが沈む。



深く、ずっと奥まで────沈んでいく。