まあ、食ってしまいたいくらいには。





肌に食い込む指先はまだ当分、緩まりそうにない。

だからといって暇だなぁ、なんてぼんやりする余裕はなく。



「…っ、……、」


なるべく声を出さないように、

──それを知られないように、口をひた押さえる。



だめ、だめだめ。

なにか違うことを考えよう、ウンそうしよう。


たとえばわたしがフォークだったら、とか。

もしそうなったら、わたしはなにを食べるだろう。


ブロック…は、たしかに食べないかも。

じゃあやっぱり甘いものかな。


いちごのショートケーキ、フルーツタルト。ラベンダーチャイのシフォンケーキ。わたしあれ大好き。


考えてたら食べたくなってきちゃった。

そういえば新しくできたケーキ屋さんが駅前にあったよね。


また今度にでも下見に……と。

そこまで考えたときだった。



「っ、! ひぁ……っ」


とうとう、知らないふりにも限界がおとずれた。

あわてて口を両手で押さえる。


のに、声はもう抑えられなくなっていた。

あきらかにさっきまでとは毛色の違う声に、耳の後ろがかあっと熱をもつ。



「……お前、もしかして」



──これだけは知られたくなかったな。


いつの間にか相手以上に荒くなっている息を、赤くなっているであろう顔を腕で隠した。



「、それ以上は…言わないでください。考えないように、してるんです……」