狙われているものを察して、誘導するようにその頭を引き寄せた。
「そっちはだめ……ほら、こっちです」
獣のような荒い呼吸や唸り声、わたしの苦痛に滲んだ吐息だけが辺りにさざめく。
痛い、くるしい。
だけど……
「奈良町先輩もくるしかったですよね。今日、ずっと苦しい思いをさせちゃってましたよね。っつ……ぅ、だから、せめて、一緒に楽しめるようにって思ったんですけど……あはは、これも独りよがり、だったかもしれません」
そのとき、奈良町先輩が一瞬だけ正気に戻ったのがわかった。
わたしの言葉に反応してじゃない。
わたしが、自分の服の襟をぐっと下げたからだ。
外気に、そして人の目に晒してしまった素肌。
「先輩、もう、我慢しなくてもいいですよ。一緒にいろんなことをお話しできて、映画も観れて、今日は楽しかったです。ありがとうございました」
恥ずかしい気持ちがないといえば嘘になる。
それでもこれは……
あの頃は抱くことすらなかった感情だった。
なんでだろう。
そう思ったら、恥ずかしいことなんてなくなった。
「先輩、この世はギブアンドテイクです」
────わたしを食べてください。



