まあ、食ってしまいたいくらいには。



桃ってぜんぜん泣かないよね、って。

たしかに周りから言われたことがよくあった。

それほどわたしが泣かなかったか、すぐに泣きそうな子だと思われていたのかはわからない。


そのときはそんなことないよって笑って返したけど、本懐は別にあった。



泣かないよ。


だって、泣いたらもっと悲しくなっちゃう。

自分は不幸なんだって認めることになっちゃうから。


だから、絶対に────泣けなかった。




「耳元で叫ぶな、うるせえ」



虚勢を張るような、苦し紛れのひとこと。

それでも偶然か、わたしの耳にすうっと届いた。



ようやっと、周りがみえてくる。



灯りがついてるここは、娯楽室で。

相手が苦しくなるとわかっていても、わたしはともに床に座りこんでいるその人の胸に、自分の顔を押しつけられずにはいられなかった。




「…………奈良町先輩」



フォークを前にあれだけ暴れていた心臓が落ち着いていくのも可笑しな話だ。


ぶっきらぼうに頭を揺さぶられ、それがこの人なりに撫でているのだと気づいたとき。

なんだかおかしくなって、わらっちゃって。


ちょっとだけ、涙がでてしまった。