そのとき、ぶるりと身体が震える。
そういえばちょっと冷えてきたかも。
走ってるときに汗かいちゃったし、羽織るものも持ってきてないし……。
言ったら、「だから言っただろうが」って怒られちゃうだろうから黙っておこう、とした矢先。
くしゅんと出てしまったくしゃみ。
奈良町先輩が立ち上がった。
そのまま劇場内を出ていってしまう。
お、怒って帰っちゃったのかな……?
追ったほうがいいのだろうかと思っていたら、すぐに戻ってきた。
「え。あ、えっ、あ?」
ばさりと膝に落とされたそれはブランケットだった。
時期外れだから、たぶん、わざわざフロントで借りてきてくれたんだ。
……わたしの、ために。
お礼を言うことも忘れて、となりに座り直した奈良町先輩を見やる。
「あ、あの、ありがとうございます」
なんか、なんだろう。
男の人に優しくされることなんて滅多にないから、ちょっとだけどきどきした。
いつもとは違う種類の、どきどき。
わたしはそっとブランケットを抱き寄せた。



