まあ、食ってしまいたいくらいには。




目的地──ミニシアターに着いた頃には、わたしは息も絶え絶えになっていた。

奈良町先輩は息ひとつ乱れていなくて、上映作品のポスターを眺めている。


ようやく呼吸をととのえて、わたしもとなりに並んだ。



「奈良町先輩、人混み嫌いじゃないですか」

「は?決めつけんな」

「嫌いそうじゃないですか。だから、大きい映画館よりこういうシアターのほうがいいかなって思って」


どうやら奈良町先輩はあの日だけじゃなく、暇さえあれば娯楽室で映画を観ているらしい。


それを知ったとき、この人のどこにそんな時間があるんだろうと不思議におもった。


学業に生徒会の仕事、それにいくつものバイト。

ぎゅうぎゅうに詰まってる予定のほんのわずかなスキマ時間も費やすくらい、映画が好きなんだろうな。



「それに、こういうところのがリバイバルとかもありますし。わたしもたまに来るんですよ」


奈良町先輩の好みはよくわかんないけど、名作は外さないだろうし。



あ、ジブリもある。


昔よくおばあちゃんと観てたなあ。

トトロのおばあちゃんがそっくりで、出てくるたびによく笑ってたっけ。



「奈良町先輩はジブリなら何が好きですか?」


わたしはトトロと猫の恩返しが好きです、って。

ちょっとした雑談のつもりで奈良町先輩に問いかけたけど、答えは返ってこなかった。



「ええと、あ、映画どれにします?」

「どれでも」


どれでもいいがいちばん困るんだけどなあ。


そっとその視線の先を追うと、奈良町先輩はひとつのポスターを見つめていた。


目は口ほどにものを言う。

なんて、睨まれるだろうから言わないけれど。




「じゃあ先輩、わたし久しぶりにジブリ観たいんで、これにしましょう!」