「本当にいらないんですか?」
さっきから食べ歩きをしているのはわたしひとりだけ。
買ったばかりのアイスをすすめると、心底ウザそうに息を吐かれた。
「ふざけんなよ」
「ふざけてなんか、フォー…先輩たちだって、食べることはできるじゃないですか」
「粘土を食えっていわれて食えんのか?」
一瞬、言葉につまる。
すると畳みかけるように奈良町先輩は言った。
「てめえ、前に嵐にも変なもん食わせてたな」
「変なもんって、あれは」
「なにがしてえのかさっぱりだが、余計なことしてんじゃねーよ。てめえにはわからねぇだろうが、俺たちにはそれぞれ食えるもんってのがある」
はっと息を詰めるわたしに、奈良町先輩は続ける。
「あいつ……嵐は、人がいいからんなこと思わねえだろうが、普通ならキレられたっておかしくねえ。覚えとけこのポンコツケーキ」
心を抉り取られるような感覚に襲われる。
言葉は悪いけど、めちゃくちゃに悪いけど、奈良町先輩が言っていることは正しかった。
わたしは食べることのおいしさを、しあわせを知っている。
だから相手も同じだろうって、そう思ってた。
もしかしたらそれはただの押しつけ、わたしの独りよがりに過ぎなかったのかもしれない。



