「ねえ聞いた?この前ケーキが襲われたんだって」

「え、それってフォークに?」

「そうそう。ってかフォークしかいないでしょ」



人差し指をゆっくり唇によせて、言葉をつなぐ。




「なんでもね、現場がちょうどこの辺りだったらしいよ」

「やだ、こわ~!」



大げさに抱きついてから、ひとこと。




「あたし、ケーキじゃなくてよかった~」

「ほんとね。ケーキだったら怖くて外にも出られないって」

「わかるー。ツイてるよね、うちら」

「というかケーキがばかツイてないんでしょ」

「あはっ、言えてるー」



きゃっきゃ、そのまま走って行ってしまった。



恐ろしそうに、だけど笑えているのは、ほんとうに他人事だからなんだと思う。