先生が用具室を出てから3分経過。
ちゃんと腕時計で確認した。



用具室の扉からヒョイと顔を覗かせ、目を左右にキョロキョロさせて人影がないかどうかを確認。
誰にも気付かれないようにと用心深く用具室を出た。



秘密の恋愛ははっきり言って楽じゃない。
普段何気なく使っているこの用具室を出る事すら、勇気が必要なのだから。




しかし、安堵により深い吐息をもらしながら両手で静かに扉を閉めた、次の瞬間。



ポンッ……………



突然、後ろからいきなり誰かに肩を叩かれた。



「えっ………。」



緊張状態が続いていたせいか、ビクッと身体が揺れ動いた。
全身の血の気が一気に引いていくのがわかる。




一瞬、心臓が止まりそうだった。


私の肩に乗せている誰かの手。
その気配に焦って身体が硬直する私。

そして、シンと張り詰めた空気。



先生との関係が…バレ……た?



びっくりするあまり、まるで蛇に睨まれた蛙状態に。
一瞬、頭の中に『退学』の二文字が過ぎった。



「梓。…あいつ、高梨だろ。」



聞き覚えのある声がした。
だけど、秘密の恋に《安心》という二文字は存在しない。

ガタガタと身体を震わせながら、恐る恐る後ろへと振り返ってみると……。


そこには、奇しくも三年間同じクラスで高一の始めから半年前まで交際していた元彼 蓮が、ムスッとした表情で私をまっすぐ見ている。