「なら仲直りしましょう!」

 一瞬、言われた事が理解できなかった。

 言われた言葉が分からなかったんじゃない。どうしてそういうのかが、分からなかった。

 目の前には、心配した様子で眉を下げている神菜がいる。

 神菜はわざわざここまで来てくれ、真実を聞きに来てくれた。

 神菜が来てくれたって事実が嬉しい。

 けれど僕は、すぐさま頭を下げた。

 僕がした事は、許される事じゃない。

 そうは言っても、謝って済む話でもない。

 ……だけれど、謝らないといけないと分かっていた。

 それなのに、神菜は首を横に振った。

 そしてあろうことか、自分も悪かったと言い出す始末。

 神菜が悪い事わけないのに、神菜は一向に引かない。

 それでそんな、両者とも納得できる提案をしてきたんだろう。

「……神菜さん、お人好しすぎです。」

 気付けば僕は頬を緩めていて、久しぶりに笑顔を作っていた。

 いつもは人当たりを良くする為、愛想よく振る舞っていた。

 それほど笑顔を作る事が得意だったのに忘れていたなんて……よっぽど、神菜の存在が自分の中で大きいんだと思う。