……なんて誤算を、してしまったんだ。

 僕は殺戮魔術が発動した時、そう思った。

 この世の終わりかと思うほど絶望し、自分の未熟さに痛めつけられた。

 あの殺戮魔術を発動させたのは、僕だったから。

 何の為か。そんなのは、あの人関連に決まっている。

 元宮神菜を、完全な形で僕のものにする為。

 僕は過去に、父さんに連れられて元宮神菜に会いに行ったことがある。

 その時僕は中三で、神菜は中二だった。

 神菜は政府に引き取られていたから、大きな施設みたいなところにいた。

 当時の神菜は今と変わらず、心優しい人間だった。

 誰にでも慈悲を持っていて、笑顔を絶やさない可愛らしい人間。

『彼女が魔術師の元宮神菜さんだ。創、挨拶しなさい。』

 だけど僕は、人間と馴れ合うつもりなんてなかった。

 人間は魔族より面倒な生き物だから、関わるだけ無駄だと思っていた。

 ……なのに神菜は、そんな僕にも優しい心で関わってくれた。

『創さんって言うんですか?初めまして、元宮神菜です。』