「――神菜、遅くなって悪い……っ。」

「あらた、さん……?」

 神菜を視界に移した途端、俺は戦慄に近い何かを覚えた。

 神菜の周りには魔力が溢れていて、下手すれば取り返しがつかなくなる。

 ……だから、本当に良かった。

 神菜が手遅れにならなくて。神菜を失う事にならなくて。

 もう少し俺が早く戻れていれば、良かったことなのに……っ。

 俺は一応魔力を凌駕する神力を保有しているから、早く来れば対策ができた。

 なのに、どうしてもっと早く来なかった。

 神菜を抱き上げて、人目のないAnarchy室へと連れていく。

 テレポートを使い一瞬で移動して、神菜をソファに下ろす。

 今の神菜は変装を外しているらしく、地味子姿ではなかった。

 その事実に、不覚にも黒い感情が沸き上がってしまう。

 神菜は地味子姿も可愛いが、今の姿も可愛すぎる。

 だからもし……見た目だけでこいつに好意を寄せるような馬鹿が出てくるかもしれない。

 いや、絶対に出てくる。

 それに魔術師としても有名だから、余計に嫉妬心に苛まれそうになった。