さっきの攻撃で大きな風が吹き、体制も崩れさせられた。

 ……っ、あっぶな……。

 こんなヘマしてる場合なんかじゃないのに……。

 僕がこうやってヘマしてる間にも、殺戮魔術は崩壊の準備を始めている。

 それだけは、何としても止めないと。

「……?」

 だけどさっきから、殺戮魔術の動きがおかしい。

 ついさっきまでは狂ったように渦巻いていたのに、今は黒い塊と化していて動く気配がない。

 嫌な冷や汗が頬を伝い、気を紛らわせるように下唇を噛み締める。

 その瞬間、ぐいっと殺戮魔術の動きが再開され出した。

 来るかっ……!?

 もしかしたらもう一度攻撃が来ると思って構えた……その時だった。

「私の魔力を狙っているんでしょう?だからこれ以上、他の人を傷つけないでください。」

 ざわざわとしているのにも関わらず、澄んだ声が聞こえてくる。

 その声には……聞き覚えがありすぎた。

 それと同時に中央棟に現れた人影に、僕は今までにないほどの恐怖を覚えた。

「……かん、な……?」