「何してんだ、お前。」

 目の前の状況が、信じられない。

 今日は帰りが遅くなると神菜から連絡されていたから、大人しくAnarchy室で待っていた。

 さっき仕事が終わったと連絡が来て、いつものように昇降口で神菜を待つ。

 習慣化していたことだから、何も疑問を持つ事なんてなかった。

 だが……今の状況は何だ。

 神菜の姿が見えないと思って、生徒会室に向かっていたら……今の状況に出くわした。

 草薙創が神菜を拘束して、近距離で何かを言おうとしている。

 神菜の瞳からは大粒の涙が流れていて、一気に怒りの気持ちがこみ上げた。

 こいつ、神菜に何して……っ。

「新さんっ……!」

 神菜は俺の姿を捉えると、草薙を押してこっちに駆け寄ってくる。

 ぎゅっと力強く抱き着いてきた神菜を受け止め、引き寄せた。

「俺がいるから大丈夫だ。すぐに来れなくて悪かった。」

 俺がもっと、早く来ていれば……。

 遅すぎる後悔の念に苛まれ、神菜を安心させるように抱き上げる。

 一刻も草薙から、神菜を離さないといけない。