とある公爵令嬢の華麗なる遊戯〜私、絶対に婚約破棄してみせます〜


内心自分を褒めつつ、意気揚々と歩いていた時だった。

「ん?フロイド…?」

後方から突如として、名前を呼ばれ、私はついピクッと反応してしまう。

そのまま、おそるおそる視線を声のする方へ移した私は、声の主を視認し、思わず目を見開く。

嘘でしょ…。
何でこんな時に出くわすの?

タラリと冷や汗が頬を伝うのを感じつつも、私はソッと小首を傾げ、「どちら様ですか?」と問いかけた。

「…って女の子じゃん。悪い…人違いだ。ちょっと知り合いに似てたからさ」

素直に謝罪し、タタッと軽やかに近寄ってきたは…まさかのキース。

今日は、非番なのかいつもの騎士団の制服ではなくラフな私服姿だ。

「そうなんですね…。お気になさらないでください。他人の空似なんてよくあることですから」

フフッとキースに向かって笑顔を見せると、彼もつられてフッと笑みをこぼす。

そして。

「いや、こんな可愛い子と"アイツ"を間違えるなんて俺もどうかしてるな…」

整った顔で、サラッとそんな発言をするものだから、私は思わず目を見張った。