あの時の楽しげなロイの顔を思い出すと、腸が煮えくり返る。

「まぁ…。フローラの気持ちもわからないではないわよ。貴女が頑張っていたのを私はずっと近くで見ていたしね。でも、フローラだって自分が男装して騎士団に所属してることは隠してるんだし、おあいこなんじゃない?」

苛立つ私を諌めようとそう声をかけるミリアに私は「…ロイ・シェラードだって、自分が騎士団副団長だということを隠してるわ」と言い放ち、そっぽを向いた。

「もう、フローラったら…ああ言えばこう言うんだから…」

呆れたようなミリアの視線に再度反論しようと口を開いた時。

コンコン。

私の部屋の扉をノックする音が聞こえ、思わずミリアと視線を合わせる。

「誰かしら?メイドにはしばらく部屋に近づかないように言ってたのに…」

「とりあえず、確認したら?」

ヒソヒソ声でミリアとそんな言葉を交わした私は、椅子から立ち上がると「…どなた?入って構わないわ」と小さく声をかけた。

すると。

「お嬢様!ミリア様とのご歓談中に申し訳ありません。お部屋には来ないようにとのことでしたが…実は公爵様が執務室へ来るように…と」

部屋の扉を開け、お辞儀をした執事の言葉に私は目を見張る。