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「信じられないわ…!あーもう。思い出しただけで腹が立つ!」

翌日のティータイムの時間。
私の部屋からは、そんな苛立ちの声が響いていた。

「ちょっとフローラ、少し落ち着きなさいよ。でも、まさか引き篭もり公爵が街の騎士団副団長様なんてねぇ〜。しかもイケメン」

私に呼ばれて遊びに来ていたミリアがテーブルに置かれたクッキーに手を付けながらニヤリと微笑む。

「でも、よかったじゃない?どんな人かと思って心配してたけど…頭も良くて、剣の腕も立つ、その上、顔も良いハイスペックな婚約者様なんて。羨ましいわ〜。ん!このクッキー美味しいわね」

続けてそう言葉を紡ぎ、パクっとクッキーを口にする彼女を横目に私は小さくため息をこぼした。

「もう、ミリアったら…逆よ逆!どうせなら私の全く知らない引きこもりのぽっちゃり公爵様の方が幾分かマシだったわよ…」

「…フローラも大概変わってるわねぇ。ハイスペックな婚約者の何が不満なのよ」

「シェス…いえ、ロイ・シェラードは私の夢を話したにも関わらず、婚約を続行するって言ったのよ?少しは話が分かるかと思って正直に話したのに…どうせ、女だからと馬鹿にしたに違いないわ」