しばらく私の言葉を思案するように黙り込むロイ。

その間、私は気を張りつめながら彼の返答を待った。

できれば切れ者の彼を敵に回したくないというのが正直な所。
だからこそ、穏便に婚約破棄できればそれが1番なのだ。

「なるほど。貴女の言い分はわかりました。キャンベル公爵令嬢は、勉学…特に語学に長け、剣術も男性顔負けだとか…それもキャンベル公爵家を守りたいという強い信念があられてこそなのでしょうね」

そう口を開き、微笑んだロイに私はパアッと表情を明るくする。

「お褒め頂き、光栄ですわ。それでしたら…!」

「けれど…婚約破棄は無理ですね」

「……は?」

聞き間違いかしら?

「…ロイ様、申し訳ありません。もう一度おっしゃってくださいます…?」

私は、引きつりそうになる口角を上げつつ再度問いかけた。

だって、どう考えても今の流れは「キャンベル公爵令嬢のお気持ちを汲んで、今回の婚約は考え直しましょう」ってなるはずでしょう…!?