その表情が本気で怒っている時のシェスと同じで、ツーっと冷や汗が頬をつたう。
こういう時は、なるべく波風立てないことが正解だということはわかっていた。
とにかく、ロイ・シェラードがシェスなのか現状、判断はつかない。けれど…。
仮に同一人物だった場合、私がフロイドであると彼にバレるのだけはどうにか避けなければならない。
「まぁ、ご気分を悪くされたなら謝罪いたしますわ。けれどロイ様は、なぜその異名を受入れてましたの?都合が良いとは?」
なるべく公爵令嬢の自分を意識し、言葉遣いや振る舞いに最新の注意を払って彼に問いかけてみた。
まずは情報収集が先決。
ただでさえ少ないロイ・シェラード公爵の情報は彼とシェスの繋がりを関係づけるためにも必要不可欠だった。
どんな些細な変化も見逃すまいと私はジッと視線をロイに向ける。
「…まぁ、仮にも私の婚約者という立場の貴女にまで嘘をつくのも気が引けますし…。私が今まで表舞台に姿を見せなかったのは、シェラード公爵家の影を引き受けているからです」
「影…?」
「そう。もう少し簡単に言うと、兄であるハリスのサポート役みたいなものですね」



