「中々、突拍子もないことをしてくださるから婚約後も退屈せずにすみそうです」
クスクスと笑いを堪えて、近づいてくる彼に最初は戸惑っていた私だったが、冷静に考えると若干イラッとしてしまう。
だって、そもそも長時間待たせたそっちに非はあるわけだし。何でこっちが笑われないといけないのよ。
しかも「退屈せずにすみそう」だなんて上から目線も良い所だ。
「…公爵様こそ、随分遅いご登場で…。うふふ。確かに私も待ちくたびれてしまって少々お遊びが過ぎましたけれど…"引き篭もり公爵様"の異名を持つ貴方がお部屋から出てこられるか心配で、心配で…。なので、こちらから伺わせて頂いた次第ですの」
ピタリ。
私の言葉にロイの足取りが止まる。
無礼な言い草なのは百も承知。
だけど、私だって言われてばっかりで黙ってはいられなかった。
ちなみにこれで嫌われて婚約解消となれば2度美味しいわね。
伏せていた顔を上げ、私はロイ・シェラード公爵へと視線を移す。
ついでに、その顔しっかり見せてもらおうじゃない。



