「…私も実際会ったことはなくてな。ただ、この手紙が先週届いたのだ…文面を見るにかなり礼儀を弁えているように思えて承諾したのだが…」
そう言って、引き出しの中から取り出したのは、ひと目で高級だとわかる豪華な封筒だ。
字体もかなり、達筆で手紙の内容からも聡明な人物であることが伺えた。
「お父様、こんな手紙だけじゃ、本人が書いたのかなんてわからないじゃないですか…代筆を立てたという可能性だってありますのに…」
私のその言葉に、ハッとした様子の父に私は肩を落とす。
お父様って…こういうところ抜けてるのよね。
「…と、とりあえず1回、会ってみるのはどうだ?手紙にもお前と会いたいと書いてあるし…」
「わかりました、もういいです…お父様の顔もありますし1回だけお会いします。ただ、婚約に関しては私納得しておりませんのでそのつもりでお願いします」